June 07, 2004

タテ書き、ヨコ書き、パソコン書き

一人の人が同じテーマで「タテ書き」、「ヨコ書き」、「パソコン書き」で文章を書くと、中身まで変わるのか?

と、これは某広告代理店の生活研究所が発行している広報誌に掲載されていた調査結果と考察です。



<語られている内容の違い>
タテ書き:社会と自分との関係を意識している、自分の気持ちを押さえ気味
ヨコ書き:次々に心に浮かぶことをそのまま書き綴っている
パソ書き:決意とともに明るい展望、または具体的な目標が結びの部分で語られる
●具体的な文章例
タテ書き:だからこそ、周りの大人はどのように手助けが出来るのかを考えるべきだと思います。
ヨコ書き:大人がどのように手助けすることが出来るのかを考えさせられる場面が多いです。
パソ書き:そんな中で、大人がどう関わっていくべきかを考えたいと思います。
●その他の例:テーマ「夫へのグチ」
タテ書き:夫への不満をぶつけながら、三つの中ではいちばん抑えた書き方
ヨコ書き:心に浮かぶことをそのまま書き綴っている。自分の気持ちを抑えていない。しかし、相手の言い分も書いてあげているのはヨコ書きだけ。
パソ書き:実家のことまで話に出てくるのはパソ書きだけ。記憶が活性化するようだ。また、パソ書きだけが、ラストで方策を見つけている。

<文体、言い回しの違い>
タテ書き:客観的
ヨコ書き:私的
パソ書き:ちょっとエンターテイメント
●具体的な文章例
タテ書き:カルガモのように(=直喩で、客観的)
ヨコ書き:まるでカルガモみたいに(=喋り口調)
パソ書き:カルガモじゃあるまいに(=古風で勢いのあるセリフ回し)

<文体の違いが著しい>
タテ書き:論文調。文章は短く、「だ。」「いる。」と畳み掛ける。
ヨコ書き:「喋りかけ」口調。断定を避けながら「らしい。」「だろう。」と推論を進める。
パソ書き:「喋りかけ」に近いが、「なんだろうか。」と推論しながらも、「と、ぼんやり考えてしまう」と思考が走ろうとするのにのに一度ブレーキを掛けている様子。ある程度の抑制が効いているようだ。

<その他>
パソコン書きは、結びの部分で言い切らない『…』型が多い
入力して変換することで表示された文字は、タイピングするときに込めた思いや、自分らしさが削ぎ落とされて、「意味」だけを伝える「象徴としてのデジタル文字」である。「伝えたかった気持ちと比べて何かが足りない」という欠落感を、無意識のうちに「…」で補っているのではないか。

<応用編>
●自分史
パソ書き:明るい気持ちになって、各内に未来への展望と目標が見えてくる。自慢話になりやすい人は、心情の吐露が途中で止まるタテ書きがいい。

●日記
パソ書き:「自分史」と同じ理由
ヨコ書き:思いのまま書き綴りたいならコチラもいい。
タテ書きは、社会との関係を意識させられるから、職場の出来事で落ち込んだ時には止めた方がいい。

●告白
タテ書き:「つき合うべき」でプッシュするならコレ
ヨコ書き:どうしようもない胸の内をムリヤリにでも伝えたいならコチラ
パソ書き:気持ちを素直に打ち明けたいなら、これ

●別れの手紙
タテ書き:気持ちを抑えて、「別れるべき」を貫く場合
ヨコ書き:思い出に浸りながら、連綿と綴りたい場合
パソ書き:明るいトーンで、自分のこれからのことも書きたい場合

●企画書
タテ書き:発想が自己抑制されそう
ヨコ書き:お喋りのように冗長になりやすい
パソ書き:勢いのある言葉や、エンターテイメント的な言葉が浮かびやすく実戦的

●借金を頼むなら、社会的な信用を意識しながら厳粛な気持ちでタテ書き
●借金を断るのも、私情を押さえて言い切るカタチになって断りやすいタテ書き
●犬のフン害などを禁止する張り紙は、「べき」論で社会性を意識しながらタテ書きで

●会社を辞めたいことを妻に伝える
パソ書き:将来のビジョンを見せて理解を得るならコレ
ヨコ書き:今がつらいことを情に訴えやすい。が、「生活はどうするの?」と反撃されると説得力としては弱い
タテ書き:社会(厳しい再就職の現実など)を意識するから、書いているうちに気が変わることもあり得る。

反省:タテ書き
グチ:ヨコ書き
夢:パソ書き

なお、「パソコンの文字変換で、使用する漢字の量が増えるのでは?」という予想は、漢字使用率の平均値によると、どの書き方で漢字が多くなるとは言えないとの結果が出た。
Posted by redpanda at 04:18 P | from category: 色々な動物園 | TrackBacks
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