August 28, 2005

「葛西臨海水族園」建設裏話

葛西臨海水族園をテーマに採り上げるということで、若手建築家さん達が行っている勉強会に潜り込んできました。
専門用語も多く「??」な部分も多かったけれど、印象に残った事を箇条書きで書き連ねてみました。
無理矢理に話をつなげると間違った事を挿入してしまいそうなので、読みにくいでしょうがご容赦ください。

水族園


●バブル絶頂の1984年、埋め立て真っ最中の江戸川区葛西に建設決定。1989年竣工。上野動物園開園100周年記念事業でした。
●埋め立てで軟弱な地盤の上に「安定した円形の皿」を乗せるというアイデアを元に設計。(実際にお皿を敷いているワケじゃないよ)
●工事終盤になって、埋め立て地盤と杭体に測方流動が生じてきた。工事完了間際に周辺土中に発泡スチロール(もちろん建築用だ)を敷き並べた。
●計画段階ではイルカ、クジラの展示予定だったが、動物愛護の風潮の中、マグロ展示へ変更。しかし開館日は変更せず、設計を変更、工事を完成させた。
●どこも実現させていないマグロ展示に決まったものの、マグロって何処を泳いでいるの?どこで捕獲するの?から始まった。

●マグロは体の表面が薄く脆いため、人間が手で触っただけでヤケドしてしまう。更に最初のマグロ3000匹は、水槽のアクリルガラスに追突して次々に死んでしまった。クッションとしてビニールを張っても、ビニールを突き破ってしまった。
●水槽のアクリルパネルが黄色く変色するのを防ぐため、加工段階で幾つもの工夫がなされた。
●四角のエントランスを入ると数段の階段が。なんとこれは建設が始まってから「東京湾の高潮対策のために屋上をもう1メートル上げておいてよ」という鶴の一声が上がったから。
●エントランスの四角形、水族園の建物の円形、中央のガラス張りのドームの八角形。その判り易い造形の対比と美しさ。
● 建物は二層平面。エントランスを入ると眼前に広がる水とドーム。「もうちょっと塔を作ったりとかしなさいよ」という周囲の雑音に対し、葛西という土地は対岸にディズニーランドが見えているから、ちょっとやそっと建物を出っ張っらせても太刀打ちできない。それなら逆にシンプルにフラットに、という姿勢を貫いた。

●建物の屋上に水が張ってあるのはどうして?それは冷房効果と室内の温度変化を少なくするため。
●建物の四分の三はサポート室である。
●ペンギン舎とエトピリカの疑岩は、建築家が世界中を回って研究し、米国ラーソン社を採用。実際の岩から型を取り、1メートル角のブロックにして制作。設置には米国から技師を呼んだ。
●ドームに入りエスカレーターを下ると正面に水槽がある。ところがこの水槽だけは、あらゆる塗料を削ったりどのように工夫しても魚が死んでしまう。その原因は水槽上部のパイプから落ちる水滴による小さな泡だった。小さな気泡が魚のエラに付着して呼吸困難に陥らせていたのだった。パイプを水中に埋める事でようやく解決。
●オープン間際になっても「マグロが回らない!」。開園の危機! 結局(マグロを水槽に入れてから?)一ヶ月経過する頃に、小さくて若い(頭脳の柔らかい)魚から回り始めた。

◆水族園の完成後、お偉方の見学の際に「あの設計図が、こんな見せ方や、こんなに素敵な空間になるとは、判らなかった」というコメントをもらった。
それは都の関係者が「これはイイ物になる!」という確信のもと、根気づよく立ち回ったのも一つの要因。
そして、このように大胆なデザインの建築物を実現できたのは、バブル期という特殊な時代だったから、というのも一つ。

<オマケ>
葛西臨海公園の展望レストハウスは、展望という割には塔ではない。
それは葛西の展望ハウスは「遠く海を見通すのではなく、渚を見るため」に作られたから。
地上部分に娯楽施設がないのは、設計者に「大人の為の葛西」というコンセプトがあったから(レストランは地下にささやかに作られています)。
結果的に海外の建築家には高い評価を受けるものの、国内的には「なんで?」という反応が多いらしい。

<オマケ2>
江戸川区自然動物園から葛西臨海水族園へは、徒歩15分→バス20分→徒歩5分で行けますが、バスの本数が少ないので事前に時刻表の確認は欠かせません。
Posted by redpanda at 11:57 P | from category: 色々な動物園 | TrackBacks
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